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2012年06月14日(木)更新

労務士会支部研修 「是正勧告されないための労働時間管理」

 みなさま、こんにちは。
 熱血漢社労士 西村介延 です。

 きのうの夜、労務士会の支部研修 ありました。
 「是正勧告されないための労働時間管理」

 講師は兵庫県で労務士をされている 角森洋子さん。
 もとは労働基準監督官だったということで、労働行政にも精通されています。

 アレッ??とおもったのは、法科大学院で民事訴訟法を教わった先生と苗字がおなじ・・・。
 たしか、先生、講義のときによく、奥さんが労務士で・・・といってたっけ・・・。
 あとできいてみると、やはり角森先生の奥さんでして・・・。
 なんだか、奇妙なご縁、感じました。

 それはさて。
 「是正勧告されないための」・・・などというと。
 なんだか行政の顔色ばっかみてるような、後ろ向きのイメージになってしまいますが。 
 そうではありません。
 なんとかして、「生命・身体の安全を確保しつつ労働できる」(労働契約法5条)環境を整えたいと考えてるんですよ。

 たとえば、ちょっと周囲を見回すと・・・、
 つい最近も、大阪のすしチェーンが時間外休日労働手当の不支給で書類送検されました。
 その前にも、ハンバーガーチェーンの店長さんが過労死しましたし、和食チェーンの従業員さんも過労自殺してます。
 内閣府の 2012年版 「自殺対策白書」 でも、14年連続の自殺者3万人超を問題にされています。
 そして、その原因のひとつに長時間・過密労働があるとされています。
 研修でも、去年暮れに出た「心理的負荷による精神障害の認定基準」 がくわしく紹介されました。
 「読みましたね?」とチェックされましたので、「ハイ!読みました!!」と思わず、答えてしまいました。
 いちばん前に座ってたから・・・、だって、ギリギリではいったら前しか空いてなかったからね。
 
 もとい。閑話休題。
 やっぱ、これはどう考えても異常・・・。
 ふつうの感覚からすると、やっぱ、仕事をとおして自分のよさを伸ばしたりいい仲間と出会ったり・・・きょうよりすばらしいあしたを望んでるんじゃないですかね。
 それがそうはなってないのは、やっぱ、考えないといけなんじゃあ??
 だから長時間労働が恒常的に起きていそうなところを重点的にチェックしてまわってる・・・と考えるべきではないかと。
 で、おかしなところがあれば「是正してくださいね」といってるのだと考えるべきでしょうね。
 重点が置かれてる業界は、バスなどの自動車運送業・介護業界・医療機関 その他過重労働が行われている恐れがある事業場など・・・とされるのも、そうした考え方がベースにあるから。

 臨検・監督にあたっては、まず現場を見て、労働者数や業務内容・職場の雰囲気等をつかんでから、書類を見て、現場の状態との違和感や矛盾がないか、突出して多いとか少ないとかをチェックするのだと。

 個人的におもしろかったのは、タイムカードの扱いと定額の時間外・休日労働手当について。

 定額の時間外・休日労働手当については、このあいだから、このブログでもとりあげました。
 ①割増賃金部分とそれ以外を明確に区分できること や
 ②割増賃金相当部分が実残業時間分を下回らないこと
が要件にあげられます。
 しかし、②をクリアすることがなかなか難しくて、角森先生は、結果、実残業時間を元に毎月支払うほうが、後のトラブル防止からも、事務手続きの煩雑防止からも、よろしいのではないか?と指摘されてました。

 これに関わって、タイムカードなどの書類についてですが。
 実務としては、タイムカードはあくまでも、勤怠管理(出退勤管理)の一手段にすぎず、労働時間を記録したものとは見ていないということでした。
 だから、実時間を把握し、後日のトラブルを避けるには・・・。
 ①業務外で事業場に居残っているときは、業務終了後すぐに打刻を徹底する とか、
 ②時間外労働にあたっては上司等の指示や承認・実際の労働の確認などを徹底する時間管理を確立して、
 ③就業規則にも明記せよ
という指摘でした。

 労務士の研修ということで、通常の管理職等を対象とする研修よりも、突っ込んだ内容にしましたといっておられました。
 事実、ありきたりな教科書的なおはなしではなく、個々のテーマごとに突っ込んだ内容になってたと思います。
 このブログではだいぶん、省いてますけどね。

 でも・・・。
 角森先生、どうしてはんのかなあ?
 ちょっと奇妙なご縁でもあり、ハッピーな気分でした。
 同友会の例会の打合せ、途中で抜けてきたけど・・・、
 例会委員長の乾さん、それは西村さんの 徳 だといってくれました。
 それほどでも~~。
 

2012年06月11日(月)更新

きょう発売の「週刊東洋経済」 ひとごとではないうつ・不眠 特集

 みなさま、こんにちは。
 熱血漢社労士 西村介延 です。

 さてみなさま、お立合い。

 きょう発売の 週刊東洋経済 6月16日号 690円 ですが、
 「人ごとではない うつ・不眠」 の特集です。
 コンビニで買えます。

 別段、うつだの不眠だの関係ない・・・と思う人も、いまの社会を考える機会になると思います。

 おおまかに うつ 不眠 と その知識・治療法 を紹介してます。

 うつ のページでは、精神疾患が5大疾病のひとつに・・・、とか 高齢女性に多いが若年層にも増加中・・・などのデータがグラフで出てます。
 そのうえで、うつの急増の原因をさぐるページがあります。
 不安・ストレス・過労・・・これがうつが増加する悪循環だと書いてます。

 いわゆる 新型うつ にも言及してます。
 少子化やネット社会が原因だと書いてます。
 自立と成長こそ、「治療」法だと書いてます。

 新型ではない(いわゆる旧型の)うつについては・・・。
 ストレスを把握して不調のサインを見逃すな とか
 ギャンブルやお酒以外に楽しみを持つ とか バランスを保つ とか 

 きのうも紹介しましたメンタルチェックの義務化にもページを割いております。
 中小企業600万社対象 メンタルチェックを義務化 の見出しが出てます。
 中小企業には反対の声・・・とも書いてますが・・・。

 とはいえ、企業トップも実はメンタル不調になることが多いといわれます。
 リスクを自覚して、自分はきちんと管理してるということを、部下などにアピールすることも必要だと指摘してます。

 うつ や 不眠 について、全体像を示して、読みやすく書かれていると思います。
 いまの社会を考えるうえに、いい素材だとも考えられ、ちょっと調べてみるのもいいのでは??

 ところで、社会、病んでますねえ。
 きのうも心斎橋でなんの関係もないひとを2人も殺害する事件ありましたし・・・。
 考えるだけで、うつ・不眠になっちゃう。

 以上、ざっと見渡しての概観です。
 参考までに。
 

2012年06月10日(日)更新

このところ、精神疾患のおはなしが、やったら目につくんですけど

 みなさま、こんにちは。
 熱血漢社労士 西村介延 です。

 最近周辺で、メンタル不調 などと業界で言われるもの・・・が、やったら目につきます。
 (こころの病・精神疾患・・・というほうが、わかりやすいかも)
 あんたがそっち方向ばっか、見てるからやろが・・・といわれそうですが・・・。
 どうもそうではなさそうだと。

 去年、「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」 が変わりましたね。
 年末の仕事納めギリギリに変わったんで、ご存知でない方もけっこう多いかと・・・。
 でも、このことが大きな影響を与えてることは間違いないでしょう。
 厚労省はおおよそこういってます。
  ①近年精神疾患の労災請求が大幅に増加しており、
  ②申請の審査におおむね8.6か月を要してるんで、これを6か月に短縮するとともに、
  ③審査基準をわかりやすくして、認定を促進します(平成23年12月26日付)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html

 もうひとついうなら、昨年流れましたけど、メンタル対策の義務化 が今度こそ、法律になりそうだ・・・というのもあります。
 このあいだも、「がんこ事件」を調べるのに、新聞を数紙見ておりましたら、メンタル義務化 が大きな特集記事になってました。
 業界ではけっこうな話題になってます。
 これは結局、使用者のいわゆる安全(健康)配慮義務のなかで、健康診断と就労判定・過重労働対策に次ぐ3番目として位置づけられtます。
 ストレスチェックと医師による面接の実施 です。
 だから、成文化されると、直接の根拠は労働安全衛生法になりますが。
それがなくても、安全(健康)配慮義務という民法上の雇用契約・労働契約法で言う労働契約のなかでの、使用者の契約上の義務として行うべきこと・・・とはいえそうです。
 しかしそれでは契約上の義務にとどまるので、やらなくても債務不履行(民法415条)にしかなりません。
 で、公法上の義務にして強制するっつうのが、この改正の狙いっつうことで・・・。
 ま、そこまで深刻っちゅうこってすかねえ・・・。
 もっとも、消費税だの原発だので、まったまた流れそうな気配もありますけどね。
 お~~い(大飯?)!こんどは成立してね!!

 で、目についたひとつは・・・。
 手じかなところで、明日発売の 「週刊 東洋経済」 誌 に 「うつ病」 の特集がでるそうだ・・・ときいております。
 経営者の方や勤め人の方がよく読む週刊誌で特集が組まれるのは、けっこう需要??というか、関心の高さを伺わせます。
 上に述べた流れ、敏感に感じてるんでしょうね

 また、先週、社労士会の先輩から電話がありまして・・・。
 知人がメンタルのセミナーやるんで、参加してくれませんか??という。
 テーマは「非正規雇用者のメンタルヘルス対策」・・・。
 う~~ん、ええとこついてるわ・・・。
 非正規労働者多いですしね。
 彼らのおおくは、「派遣の品格」 の篠原涼子さんみたいなスーパーマン・ウーマンじゃないんで。
 いろんなところで、いろんな人や企業がこの問題を注視してるんだな…と改めて感じた次第です。

 もういっちょ。
 昨年4月から続いておりました メンタルゼミ これがまたリニューアルで改めて始まります・・・と。
 講師というか、チューターというか、はおなじ産業医さんですが。
 この手のゼミがけっこう成立するのも、みなさんけっこう、見てるんだな・・・と。

 とはいえ・・・。
 別に、精神疾患にばかり、目を向けてるんではないですよ。
 職場で起きる問題・トラブルはこれに限ったものではないですしね。
 むしろ、もっと広く目を向けるべきだと思います。
 たとえば。
 ①「がんこ事件」のような時間外休日手当への対策やトラブル防止策が関心の高いところでしょうね。
 堂島のおいしいケーキ屋さんも監督署の指導はいってますしね。 
 ②パワハラ・・・1月に厚労省が公式の定義を出しました。
  これでメンタルダウンもありでしょうよ。
  ちょっと怒ったらパワハラ!!ってさわがれてどっちがパワハラか分らんわ・・・っちゅう事件もききますね。
  基準がはっきりせんからいうたもん勝ち!
 ③また、先週のオンリーワン研究会幹事会の後の懇親会でも。
 どこの企業にも一定数いる問題社員?にはアタマ悩まされるわ・・・という意見ありました。
 ゆとり教育のおかげで(?)、わがまま言い放題!みたいなひと、増えてんのかな。
 義理の弟を事故死させた加害者の学生も、そうでしたけどね

 ま、でも、メンタルも、そうした問題のうちのひとつではあります。
 この問題を通して、意外にいろんな問題も見えてくるかもしれんしね。

 好きな言葉に 「着眼大局 着手小局」 というのがありまして。
 もとは囲碁のことばだそうですね。
 それをベトナム戦争のときにホー・チミンさんが使ってから、世界的に有名になったらしい・・・。
 メンタル問題という マイナー方面の 「小局」 を通して、プラス方向の 企業の業績アップ・そのための社員の力を引き出す道筋を考えるという 「大局」 を考えるのもよろしいかと。
 「小局」 って、「消極」なんで、そっちばっかみても商売になりません。
 ひとの力を引き出して、プラスに変えるにはどうするか??
 これこそ、「大局」でおます!!

2012年06月07日(木)更新

「最高の自分」をつくるプロフェッショナル仕事術 刺激になります

 みなさま、こんにちは。
 熱血漢社労士 西村介延 です。

 ちょっと本が買いたくてジュンク堂に行きまして。
 ついでにぐるぐる書棚を見て回ってますと、ちょっと刺激的な本が目につきました。

 「最高の自分」をつくるプロフェッショナル仕事術」(児玉光雄 フォレスト出版)

 書店に行くとわりとこの手の本はよく目につきます。
 で、またおんなじパターンかな??と、はすに構えておりましたけど。
 最初にセルフイメージを変えなさい とか ノートに書き込みなさい とか。
 これって神田さんの本にも書いてたじゃん??

 ペラペラめくってると、けっこう ふんふん! なるほど! ふ~~ん。みたいな感じで読みふけっておりました。
 略歴をみると、スポーツ選手のメンタルカウンセラーをしてるひとで、その経験からはなしをしてくれてるようだ・・・。
 まあ、無責任にパターン化したお説を展開するのでもなさそうだ・・・。

 ただ、成功してる人の言うこととして、共通するなと思ったところはあります。
 ひとつのことに精通してプロといわれるには、一日3時間 10年 の時間を要する とか、成功しない人は成功する前に辞めてしまうから成功しないのだ とか。
 1日3時間10年というのは、内田光子さんやウイーンフィルのメンバーなど、音楽家の世界では当たり前とされているようです。
 成功するには成功するまでやめない というのも、先日のオン研例会できいたことです。
 
 成功する人の言うことは、なるほど共通してる。
 こうした関係のない人が共通して指摘してる点は、その人の個性や境遇・運不運にかかわらず、共通する法則的なものとして、いただけます。

 成功してる人の習慣として、頂きたいとおもったのは、「自分との対話ノート」 をつけること
 有名なサッカーの選手も、「サッカーノート」 という自分のノートをつけていたといいます。
   いま、一番てにいれたいものは?
   それを手に入れるのに、解決すべきことは?
   最近経験した最高のビジネスシーンは?
   いま、かかえている悩みは?

 毎日毎日、おなじことを記入することに意味があると書いてます。
 本当に自分の望んでいること・本当に大切なことは??
 毎日毎日、書いては読み返し、書いては読み返すことで、こうしたことがわかってくるんだと。

 そして、なにより感動したのは、自分を愛しなさい!! 「きょうという日は、人生の中で一番若い日」
 だから、遅すぎるとか歳をとってるとかにかかわらず、絶え間なく正しい努力で才能を磨きあげなさいという指摘です。 

 たま~~に、この手の本を読みますと、上質のはげましで勇気がでます。
 玉石混交のビジネス書ではありますが、うまく選んでうまく自分をコントロールしたいですね。
 

2012年06月06日(水)更新

「労働事件審理ノート」勉強会しました。退職金について

 みなさま、こんにちは。
 熱血漢社労士 西村介延 です。

 先週に引き続いて、労働事件審理ノート 第3版 の勉強会を行いました。
 退職金請求権について と 労災について。

 労災は、裁判で争われることが多い 脳・心臓疾患による過労死や心理的負荷による精神疾患について話し合いました。
 しかし、こちらは別に後日かきます。
 関心のあるかたは、審理ノートの9章のほか、「労働関係訴訟」10章・弘文堂「公法系訴訟実務の基礎」事例11 を参照してください。
 労働関係訴訟では過労でくも膜下出血になり障害が残った事例を扱っています。
 審理ノートでは、過労や精神疾患については参照通達をあげてるだけなんで、補足が必要です。
 公法系訴訟実務の基礎では、不支給決定や支給決定がなかなか出ないときの争い方を中心に書いてます。
 どちらも報告の基礎資料で使用したものです。

 きょうは退職金について書いておきます。

 退職金をめぐっての争いの多くは、懲戒解雇のとき や 競合する事業に就職したり起業したときの不支給・減額をめぐってのことが多いです。
 取締役と兼務するときの支給額をめぐっても争われることが多いようです。

 退職金は労働基準法では任意のもので、支給するときは要件を明示せよといってます。
 その性質は賃金の後払いと功労褒賞の2つだとされています。

 訴訟で支給を求めるときの要件(請求原因)は・・・。
  ①労働契約を結んだこと
  ②就業規則や労働協約の退職金支給規定があること
     先にも書いたように、退職金は支給するかどうか、法律が強制してませんので、支給を求めるほうで規定があるので支給を受    ける権利があると言わないといけません。
  ③上記規定による退職金支給要件の基礎になる事実
     何年勤続して定年退職だから、いくらの支給 のように、自分が②のどこにあてはまるかを具体的に言ってちょうだい 
  ④退職の事実
とされています。 

 これに対して、 使用者側の反論(抗弁)としては、
  ①退職金の不支給・減額を根拠づける規定
    例えば、長年の功労を抹消・減殺するだけの著しい背信行為があったとき など
  ②そのような不支給・減額を受けるほどの背信行為を行った事実
を主張して、支給要件の存在を認めつつも、不支給・減額を主張するもの とされています。

 懲戒解雇イコール退職金不支給 と思われがちですが。
 懲戒解雇そのものは有効でも、退職金の全額不支給までは無理・・・というケースもありうるというのは大事かも。
その不支給・減額を規制するものとして、形成された概念が、長年の功労を抹消・減殺するほどの著しい背信行為を行ったこと
というものなんですよね(審理ノート 136ページ 労働関係訴訟 200ページ)。

 多くの企業では就業規則や労働協約・個別の労働契約で退職金規定をおいていて、その規定にもとづいて請求することが多く、その場合は権利としての請求なので、賃金の後払いと考えられ、不支給・減額はおきにくいのかもしれません。
 ただ、こうした性質論から直ちに結論を出すことができるかは??ですが。
 
 裁判で争われた事例としては、
東京の某私鉄の車掌さんが痴漢して懲戒解雇され、退職金を支給されなかったことを争ったものがあります。
 最近争われることの多い事例として、競業を避ける義務に反して競業会社に就職したり競業会社を起業したりして、現に競業業務を行った場合があります。
 これは「労働事件審理ノート」 には出てませんが、「労働関係訴訟」で触れています。

 取締役の場合ですと、在職中の競業行為について、会社法356条1項1号・365条1項・423条2項で定めてます。
 356条は取締役会がない会社・365条は取締役会のある会社のケースで、423条は会社が取締役に損害賠償を求めるときに競業行為を行った取締役の得た利益は会社の損害額と推定する規定です。
(取締役の競業行為について、詳細は 判例タイムズ社 「類型別会社訴訟」Ⅰ卷 5章参照。これも東京地裁裁判官の共著です)

 しかし、労働者の場合には、在職中の競業行為を規制する規定はありません。
 ありませんが、労働契約が賃金の対価として労働力の提供を求めるものなので、契約の性質上、誠実な労務提供が求められます。
 在職中の競業行為はこの性質に反するもので、債務の本旨に従った履行をしていないものとされます。
 ですから賃金に見あう労働提供すべき債務を履行しないものとして損害賠償がありうるし、就業規則等で定めれば退職金の不支給も可能です。
 他方、退職後の競業行為は、就業規則または個別の労働契約か誓約書で定めることが多いようです。
ただ、その場合にも、地域の限定や制限される年数の制限などが広すぎて、職業選択の自由(憲法22条)を制限する場合には、下の再抗弁に出てくるような、公序良俗に引っかかる可能性があるとされています。
 
 労働者の再反論(再抗弁)は、この不支給・減額条項が公序良俗に反し無効(民法90条)を主張するとされます。
 使用者の主張(抗弁)を前提に、あらたに労働者の主張を展開するものとして、再抗弁とされます。
 そうではなくて、不支給・減額の条項を前提に、これに定める要件に当らないという主張をする場合は、ホントにあたらないかを裁判所が証拠調べすることになります。
 この場合、不支給・減額条項に当る行為をした という相手の主張を否認しているので、それ以上に議論が展開せず、そこで議論が終わってしまうからです。

 ちょっと議論になったのは、原告が請求原因で退職金支給規定を主張しつつ、再抗弁で同じ規定の不支給・減額の公序良俗違反を主張するのは矛盾するのではないか??ということです。
 しかし、民事訴訟の主張責任からいうと、自己に有利な法律効果の要件たる事実を主張しないときには、その要件を定めた法規を適用されない不利益を受けます。
 そうすると、原告は自己に有利な支給要件を定めた規定の存在を主張し、被告は自己に有利な不支給・減額規定の存在を主張していけばよく、原告がさらに自己に有利なその無効主張をしても、別段矛盾でもない・・・という結論になりました。

 先週の時間外・休日労働手当ほどには盛り上がりに欠けました。
 ちょっと抽象的な議論になりやすく、退職金の性質論から説明しきれるのかどうか や 不支給・減額の抗弁のレンジが正確につかめなかったためかも・・・。

 次回は労働者を解雇した場合に地位確認を求めて労働者が争ったときの攻防を考えようと思ってます。

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