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2011年04月29日(金)更新

ドラッカーさんがおもしろいのは??

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 きょうから世間は GW でお休みのところが多いですね。
 東北地方へボランティアに行く方も多いと、新聞にも書いてありました。
 立派だと思います。でも無理しないでね・・・。
 ドラッカーさんも言ってます。本業で成果を上げられなければ、ほかの社会的責任も果たせない、ってね。

 ところで、ドラッカーさんの本を読まれてますか~~??
 「もしドラ」アニメでは、筋書きと関係のあるところだけ抜いて紹介しているので、そのおもしろさはあまり伝わらないのが、ちょっと残念ですね。
 そのおもしろさの秘密も人によって違うでしょうが、ぼくが思うにはこんなところかな、というところを書いてみますね。

 体系的でわかりやすいこと、個々のことばの定義をきっちりしていること、新しいテーマが出てくるごとに、くどいくらいにその説明をして、いっぱい具体的な事例を引いていることが大きいかなと思います。
 こうしたことはいろんな箇所でドラッカーさん自身が書いておられます。

 でも、ぼくが一番の魅力だと思うことは、ものごとを固定したもの・変化しないものとしてとらえるのではなく、常に変化するもの・陳腐化するものとして、ものごとを見ている柔軟さです。
 すでにイノベーションを、「あらゆる事業の活動の一側面」(上巻p82)と見るところからして、変化への柔軟な対応がみてとれます。

 昨日は、「体系的廃棄」というちょっときつめのことばに、ぼくは魅かれているというようなことを書きました。
 このことばにしても、「あすを実現するための第一歩が、昨日をを廃棄することである」というように、あすが昨日と異なり、当然今日ともちがうことが前提になっています。
 そこにあるものは、つねに変化していくものとしてものごとを見ようとする姿勢です。
 また「マネジメント」下巻では、組織体の規模の変化として、量の変化が質の変化に転化し、質の変化が量の変化に転化するということを指摘しています(pp52~53)。
 これは物質の3態とかいって、氷が水になり、水が空気になる(またはその逆)ような、ものの量的性質と質的性質の関係を言い表すものです。

 たしかに、今日も昨日とおなじ、明日も今日と同じにできれば、こんなに楽なことはないのでしょうね。
 でも、社会も時代も、個人の意思とは関係なく、どんどん変わっていきます。
 その変化に対応しようとすれば、変化を当然のこととしないわけにはいかないのでしょうね。

 このブログでも、4月に入ってから、ヘーゲルさんや孫子さん、老子様などのありがたいおことばを、ずっと紹介しては、コリクツを並べ立ててきました。
 これも脈絡なしに勝手に書いていたというのではなく、ドラッカーさんの本を読みつつ、ぼくがこれまで読んできたこれらの「古典」に戻る必要を痛感したからです。
 というのも、この人たちに共通している思考もまた、時代と社会・戦争・戦局というものがたえず変化することを、体系的・普遍的にとらえようとしたものだということです。
そして、その変化する現実を、自分の都合のいいように解釈するのではなく、ありのままに見て、そのありのままの現実に柔軟に対応しようとしたということです。
 ヘーゲルさんは近隣諸国が近代的なブルジョア国家に変わっていくのを見ながら、近代化の遅れている自国の未来を真剣に考えていました。
 孫子も老子様も、戦乱の続く古代中国で、小国が生き延びるための術を懸命に模索していました。
 そしてその模索をつうじて、いまに残る「古典」を作り上げたのだと思います。
 因みに、「老子」は個人の生き方ではなく、ややこしい時代に小国が生きるすべを君主に伝える書です。
 近代のマキアベリ「君主論」にあたるもので、老子様も君主に近い官僚だったといわれています。
このあたりが「老子」を難しくしているのかもしれないです。

 そしてドラッカーさんもまた、第2次大戦後のアメリカ・ヨーロッパ・日本を見ながら、国も企業も、生き延びていくためには変化しなければ、時代と社会の変化に対応できないことを、実感されたのだと思います。

 結局、昨日のことが今日は通用しなくなり、明日は今日のことがまったくのうそになるややこしい時代に、ぼくたちは生きています。
 そのときに必要なことは、変化を当然として、その変化の先を見ようとする目を養うことだと思います。
しかし、それは未来を予測することではないし、そんなことができるはずもないと、ドラッカーさん自身が言っています。

 この連休に、「もしドラ」をきっかけとして、ちょっとそういうことを考えてみませんか?? 

2011年04月28日(木)更新

「もしドラ」見てはりますか?? ちょっと眠いですよね。

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 「もしドラ」みてはりますか~~??
 眠たいですね。ぼくはいったん10時に寝て、始まる時刻に起きる生活です(笑)。
 隣のビルの兄貴分の労務士さんも、「寝てる」とだけメールをくれました。

 さて、きょうは「もしドラ」では正面からとりあげていないけれど、ドラッカーさんがけっこう重視していることを書きたいと思います。
当然ですが、ぼくが大事に思っているからですが・・・。

 それは、「体系的廃棄」ということについてです。
 なんかきつい表現ですよね。
 コンビニ業界なんかでは、売れ残ったっ商品の処理といういみで「廃棄」といったりするようなので、ドキッとします。
 しかしドラッカーさんがいっているのは、もっと積極的な意味だと思いますよ。
 要は、自分の使命とするべき事業に集中したいがために、集中の妨げになるものをメインからはずすということでしょうか?
 
 「マネジメント」上巻では、「体系的廃棄」の表題のもとで、」「われわれの事業は何か。何になるか。何であるべきか。」を決定する上で、 既存の商品やサービス・チャネルが昨日同様、いまもまだ有効か? 有効でないならばいかにして廃棄するか?の問題は避けられないといっています(120ページ以下)。
 そのうえで、この「体系的廃棄」をはじめて論じたのが、「創造する経営者」だった、といって、そっちを読んでね!といいいます。
で、そっちをよむと、たしかに187ページ以下に「機会の最大化」という表題で、「廃棄することに機会を見出す」と書いてあります。

 「廃棄することに機会を見出す」ということ、すなわち、自分の持っている資源(限りなくあるわけではありません)をより自分の事業に有効に使う、資源を集中するということなのでしょう。この本のはじめのほうでは、集中こそが必要だと強く書かれています。

 この「体系的廃棄」を読んで思い出したのが、ゲーテの図書館をつくった粉河忠さんのお話です。
 作家の阿刀田高さんはこの人をモデルにして、「ナポレオン狂」や「夜の旅人」を書かれました。
 ぼくが思い出したというのは、「夜の旅人」のほうです。

 粉川さんは戦前戦後を通して、当時の東京帝国大学教授から個人レッスンを受けておられました。
 そのレッスンのある日、レポートを書けといわれます。テーマは「諦念」について。
 粉川さんはそんなことは考えたこともないわ・・・と思いつつ、レポートを出したところ、こんなものではレポートになっていないと突っ返されます。
 粉川さんが「諦念」なんて考えたこともないので、わかりませんというと、その教授いわく。

   諦念というのは何もかもをあきらめてしまうということではない。もっと積極的なものだ。
   自分のしたいこと・やりたいことのために、自分のエネルギーをに集中することを ゲーテさんは「諦念」という言葉で言い表しているのだ。
   
 おなじことを、兵役に行った先の上官(この上官は粉川さんのドイツ語の先生でした)からもいわれます。

  ドイツ語は魔物だ。突っ込んでいけばいくらでも突っ込める。
  しかしドイツ語を勉強すると言っても、図書館をつくるために勉強するのだから、細かいことにこだわるな。
  その目的に必要な文献が最低限読めればいい・その範囲で勉強しろ。

 ぼくはこの2つのお話が好きで、なんちゃいうてはこのお話をして、マニアになってはいかん、目的に必要な範囲にしろ、というお話をしました。このお話は勉強だけに限ったことではないと、ずっと思ってましたし、仕事の中でも心がけてきたことです。
 ドラッカーさんの本を読んで、自分の発想が間違っていなかったのだと思ったのでした。
 そんなわけで、「もしドラ」ではでて来ない話ではありますが、書きました。

 抽象的に学問的に読んでも、ドラッカーさんの本は眠たいだけだとおもうけれど、自分の体験や思い続けてきたことと関わらせて読むと、おもしろいかもね。

 

2011年04月25日(月)更新

きょうから始まる「もしドラ」アニメ! 野球部だけにスケジュールも過酷!!

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 いよいよ始まる「もしドラ」アニメ。
 きょうの夜、10時55分からNHK総合テレビで始まります。
 3月に、やるやる!!!と特別番組まで組んでいたのに、地震の影響で1月延びてしまいました。
 
 しかし野球部が舞台だけに、見る人にも過酷なスケジュールを求めています。
 毎日、夜の10時55分からだって!! 
 しかも10夜連続! 2週間ってことじゃない!!
 早寝のぼくや、自称「お子ちゃま」の師匠などには、超過酷です(スポ根アニメか!!)。

 
 さて、ぼく的には、第一にやはり「マネジメント」のお話だと、「自分の事業はなにか」「事業の使命がなにか」・・・をお客目線でみることを学んでみたいです。
 
       おれはこれがやりたい!わたしはあれをやりたい!!

というつよい思いで事業をはじめたので、その思いを熱く語ることが必要ではあります。
「ミッション」 という言葉は、流行語にもなっていて、「しんちゃん」の映画版の宣伝文句にも使われてますね。

 といっても、お金を払ってくれるのはお客さんなので、共感をえること、信頼されることが大切ではあります。
 詳細は省略しますが、この週末、ささいな(あれって、クレームなんですか??師匠?)ことで師匠とともにそのことを実感しました。
 きっちり迅速に対応したといって、あとで感謝のメールを頂きました。
 ささいなことではあるけれど、こういうことの積み重ねで、信頼関係はこわれたり積み重なったりするのだと実感した週末でした。

 で・・・、そんなことで、事業と使命をお客目線で・・・ということを、考えるうえで、いい材料を提供してくれると思います。


 第2には、この「もしドラ」の著者も、主人公も感激したという「真摯さ」について、改めて考える材料になると思っています。
 「真摯さ」はあとから付け焼刃ではえられない資質であって、しかも一緒にはたらくひとたちも、ほかのことは許しても、「真摯さ」に欠けることだけは、絶対に許さないと、ドラッカーさんは強い口調で述べています(「現代の経営」上・「マネジメント」中)。

 こんなに重要な資質である「真摯さ」ではありますが、「もしドラ」のなかでは具体的にどういうことなのか、あまり語らていません。
 上にあげた2つの著作では、
       
     人の弱みに目がいくもの   反対に強みに目がいかないもの
     何が正しいかよりもだれが正しいかに関心を持つもの
     みずからの仕事に高い基準を設定しないもの (「マネジメント」中卷pp109~110)

 が、真摯さを欠くものの例としてあがっています。

 こうしたことが、わかりやすく語られるか、見てみたいとは思っています。


 いずれにしても、去年いちばん売れたビジネス書です。
 みなさん、ややこしい時代なので、流されそうになりつつも、流されないで主体的に生きる糧をもとめていると思います。
 「マネジメント」もむつかしい・・といわれますが、じっさい読めば、ちょっとでも仕事やクラブ活動で苦労したひとなら、ぴんぴんくるものがあるはずです。
 ぼくなどは、カンペキに中毒です!!
     

2011年04月24日(日)更新

内なる力を腹に蓄え・・・亀田高志先生の「できる社員の健康管理術」はおもしろい!!

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 先日、亀田高志先生(産業医大ソリューションズ 代表取締役)から新刊の著書を送っていただきました。
 2月に東京で、職場復帰支援プログラムのセミナーを聴いたときに、師匠に紹介して頂いたご縁でお送りくださったのだと思います。
(このセミナーについては、「東京行った、新幹線乗った」というお題でこのブログにも紹介しました。このセミナーに行く新幹線の車内ニュースで、「過労自殺で国家賠償請求」が流れました。メンタルヘルスのセミナーへ行く途上でこのニュースに接するのもなにかのご縁かと思い、ほうぼうにメールしたことを覚えています。)

 さて、この本では、「仕事や職場で実績をあげるスピード」という意味での「生産性」をアップさせるために、元気や活力を回復させることは可能だし、工夫もできると説いています。
 そのために、まずは現状分析として・・・生産性を下げる生活習慣や日常の考え方を紹介しています。

 遅い就寝・睡眠不足・飲酒・朝食抜き・脂肪摂取しすぎ・運動不足などが、悪い生活習慣としてあげられています。
 ぼくがヤラレタ!!と思ったのは、カフェインのとりすぎです。脳の覚醒で睡眠が浅くなり、場合によっては不眠傾向になるといいます。(そのわりにはよく寝てるけど・・・)。

 また、参考になったのは、飲酒で「うつ」に近い状態になるという指摘です。
 ぼくはお酒がまったくダメなのでわからないですが、メンタル不調気味のひとには酒が一番の特効薬だと豪語するひともいます。
しかし、その人の話をよく聞いていると、対象はごく初期の・軽い症状の人であったり、酒を飲ますというより悩みを打ち明けやすくする
ために酒を飲ませていて、人の話を黙って聞くことに重点があったりします。
 酒を飲んだり、餃子を腹いっぱい食べて治るようなら、メンタル不調がうるさく言われたりするはずもないのですが・・・。

 あと、気になったのが、「歩く」ということです。
 けっこう歩く人は多いです。しかしその歩き方が問題だと指摘されています。
専門家が言う「歩く」とは、手を大きく振って、汗をかくくらいに速く歩くことだ、ぶらぶら歩いても気分転換にはなっても、「運動」にはなっていない、と指摘されています。そしてここでいう「運動」とは、人間が太古の昔から持つ原始的・本能的な部分を刺激して、活力や集中力を高めるものを言うと書いています。

 
 ここで「人間が太古の昔から持つ原始的・本能的な部分」と書きましたが、この本の最後で亀田先生は人間が感情を持つ生身の生き物だということを忘れたために、メンタル不調や職場不祥事が増加しているのだと指摘されています。
 そして、自分も周囲の人も、生身の生き物なのだという目で見つめなおせば、あたたかくやさしい気持ちをよびさますだろう、業績が上がることもだいじだけど、ほんとうは生身のあなたが元気で活力があると感じ続けられることことがなによりなのだ、と締めくくっています。

 ぼくはこの「生身の生き物」としての人間という指摘に接して、「老子」のある1節を速攻思い出しました。

    そもそも人間に欲望があるのも、生命があるからこそのことであって、ほんとうはわが身のいのちこそが根源的なものなのだ、
    それを逆転させて、欲望のためにわが身といのちを犠牲にするのは世俗の迷妄以外のなにものでもない(13章)。
    内なる力を腹にたくわえ、文明の虚飾に惑わされてはいけない(12章)。
 
 たしかにブログなら、システムがダウンしても2日もあれば復旧もできるけれど、人間のいのちはダウンしてしまえばそれっきりです。
そうしたあったりまえのことがカンペキに忘れられているのが、いまの世の中なのだとあらためて思いました。
 そうした状況だからこそ、「老子」や亀田高志先生の指摘はとても貴重なのだと思います。

 内容が濃いわりには、3時間もあればすっと読める本ですので、ぜひご一読を。
 なお、亀田高志先生が大阪で講演なさいます。詳細は次の通り。
http://www.wetrust.me/0708.pdf

2011年04月21日(木)更新

道の道とすべきは常の道にあらず・・・「メンタル税理士」さんにお会いました。

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 きのう、同友会の早朝勉強会に参加しましたところ、そこで「メンタル税理士」の肩書きをお持ちの税理士さんにお会いしました。
 税理士さんって、ふつうは税金のこととか、それに付随して経営の指導とかをなさると思っていましたので、「えっ」という感じでした。

 お話をお聞きすると、国税にお勤めのときにメンタル不調でダウンする同僚が多く、土日とかを利用して勉強した・・・とのことです。

 そう言われて改めて思いましたけど、税理士さんがメンタルヘルスをやってはいけないとは、どこにも書いてないし、われわれ社労士  だけがやれると決まっているものでもありません。
 税理士さんはたまたま税を専門にするのでメンタルに深くかかわらないだけで、社労士は労務管理を専門にするから関わることが多いというだけのことでしょう。
 税理士さんだって、顧問先企業でメンタル不調を起こす例があるでしょうし、経営指導の一環で協力したいとお思いの方もおられます。
自分の経験から、強い意識をもってメンタル問題に取り組む姿勢はすばらしいと思いました。

 「老子」も言っています。

   これが道だという道は常の道ではなく、これが名とする名は常の名ではない(1章)。

   常を知らザれば、盲作して凶なり。 
   常を知ればい(容)る。  いるればすなわち公なり。
   公なればすなわち王なり。王なればすなわち天なり。天なればすなわち道なり。道なればすなわち久し。
   身を没するまであやうからず。(16章)

 メンタルヘルスは社労士や医師だけがやるもんだ・・・というのは勝手な思い込みであって、それぞれがそれぞれのやり方で関われるはずなのだ。
 重要なのは、メンタルヘルス対策などいらない社会をつくることで、それまではそれぞれ協力し合っていけばいい・・・。
 そんなこともわからないようでは、経験交流も意見交換もできないし、勝手な思い込みに走ってドツボにはまるだけだよ(盲作して凶)。
 反対に、柔軟に人から学ぼうとするならば、大丈夫・商売繁盛でっせ!!(身を没するまであやうからず)。

 「老子」が言っているのは、こんな感じだと思います。


 とはいえ、事務所理念にもメンタルヘルスを掲げている社労士さんなので、負けないようにしっかりやりたいと思った次第です。
 メンタル税理士さん、またいろいろ教えて下さいね!!

  そうそう、師匠からメンタルヘルスのセミナー案内してっていわれとりました。
 7月8日、大阪大学中之島センターで。
 詳細は http://www.wetrust.me/0708.pdf から。お申込みはhttp://www.wetrust.me/mvea.htmll 
   この日、講師をされる亀田高志先生(産業医大ソリューションズ)から、新刊書を頂いておりました。読まなくっちゃ。
 

 

2011年04月18日(月)更新

風林火山

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 このところしばらく、「孫子」にこだわって書いていますが、もういっちょ、書かせてください。

 「風林火山」・・・ご存知ですね?
 武田信玄の旗印にもなったことばです。

   はやきこと、風のごとく
   静かなること、林のごとく、
   侵掠すること、火のごとく、
   動かざること、山のごとし

 読めばそのとおり分りますが、静と動・停止と進行が対になっています。
 林と山・風と火が静と動とを、各々現わしています。
 
 このことばは、ぼくにとって、とても思い入れのあることばです。
 去年の後半、弟の交通事故の処理に関わって、ほとんど仕事関係では動けない日が続きました。
 ちょっとそれで落ち込んだとき、友人がこのことばを引いて、励ましてくれました。

      今年いっぱい、林と山でいきましょう。
      火と風は来年おこせばよろしいでしょう。

 このことばに、ぼくはとても勇気づけられました。
 ひとつは、風林火山にこんな見方があるのか、というちょっとしたおどろき。
 もうひとつは、いくさや人生には、いくつもの波があって、動けないとき・動いても評価されないときがある、
そのときにはその状況をいったん受け入れて、動きを止めることも、選択肢のひとつなのだということ。
 動きを止めるといっても、やめてしまうのではありません。
 あくまで「火と風」と対になっていることに目を向けるべきだと思っています。
 
  休む・考えてみる・人の動きをながめてみる・自分に足りなかったものが何か考える・・・。

 「火と風」に対をなす「林と山」には、そういう含意もあるのではないでしょうか。

 そういえば、ドラッカーさんも、同じようなことを言っています。
 意思決定について、意思決定をしないということも、ひとつの意思決定だ、とか、
成果をあげられない・時代に合わなくなった部門の廃棄も、重要な選択肢のひとつだ、とか。

 高度成長だのバブルだのといった時代には、進め進め、兵隊進め!!の突貫攻撃でも成功できたかもしれないですが、あの時代にでも、無茶な投資に乗らず、健全に事業に取り組んだ企業が生き残っていたりします。

 ひとはひと、自分がここは静を守るべきだと思えば、ひとが何と言おうと静止する、ということもありなのだ、と「孫子」に教えられたのが、この「風林火山」なのでした。

2011年04月17日(日)更新

軍は高きを好みて、低きを悪み(にくみ)

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 おとつい、ぼくの師匠がこの2か月くらい取り組んできたメンタルヘルス・ゼミの第1回が始まりました。
 さる2月5日に大阪労働センターでのセミナーにシークレットゲストで講義頂いた某大手企業の産業医のかたが講師であり、主宰者になった(その名を冠した)ゼミです。
 (なお、2月5日のセミナーについては、このブログの第1回・第3回くらいでとりあげていますので、よければご覧ください)

 さすがにメンタルヘルスにはみなさん関心が高く、企業の労務部門でご苦労されている方・顧問先のの対策に苦慮されている社労士の方など、それぞれがそれぞれに悩みを持ち寄って、知恵を出し合い、講師の先生に知恵と経験からアドバイスを頂くというありがたいゼミです。
 が、企画が体育会系女子の師匠のこととて、少人数でのスパルタ教育を宣言し、宿題はあるわ、テストはあるわ、ぼくなどは行く前からプレッシャーを感じておりました。
いえいえ師匠、楽しみにしておりましたよ(苦笑)。

 さて、きょうはそんなこともあって、「孫子」のメンタルヘルス観(?)について書いておきたいと思います。
 (?)をつけたのは、ほかでもありません。
 「孫子」の生きた時代には、メンタルヘルスなんて、中国はもちろん西洋でもなかったからです(「西洋」「東洋」などという概念そのものがなかったはずですよね)。

 それでも、「孫子」は用兵の基本事項として、健康に配慮することの重要性を認識していたようです。

   「軍は高きを好みて、低きを悪(にく)み」 と書いております。

 この解説は、2種類あるようですね。
 ひとつは、攻撃にあたって上から下へ降りるほうが勢いがついて力が倍加する・だから高きを好むのだ、逆に低きは悪むのだというのと、
もうひとつは兵の健康面に考慮して、日当たりのいい・明るい場所に陣を張りなさいという考え方を言っているという本があります。
 「三国志」で有名な曹操さんなどは、前の考え方のようです。

 しかし、それでも、あとの考え方を否定することまではしないでしょう。
 たたかいに当って、実戦に臨む部隊の健康状態が悪いと、「必ずあやうし」は目に見えています。
 前回も書いたように、相手方とこちら側の双方の状況を冷静に分析して、状況に応じた最適解を見つけよという「孫子」です。
 自軍の弱みになる兵士の健康障害の可能性をそのままにしておくわけもありません。

 なにもこのことは、むかしむかしのお話ではありません。
 快適であかるい職場をつくることは、働くすべての人が快適に働く上に欠かせないことではあります。

 ドラッカーさんも、いってます。
 
   マネジメントの目的は、凡人に凡人の能力を超える働きをしてもらうことにあるのだ と。

 せっかくご縁があって入社した方々です。
 能力以上の働きをしてもらわないと、当のご本人も、会社も不幸です。少なくとももったいないとは思います。
 そのために事業主としては、客観的な快適さとともに、主観的・人間関係面の快適さを最低限、準備してあげることが必要です。

   高きを好み、低きを悪む・・・メンタルヘルスの精神があらわれたことばだと思います。

 
 注記
 冒頭では師匠の企画した少人数ゼミについてふれました。
 もし、メンタルヘルスに関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、師匠が)7月8日(金)に「メンタルヘルス対策最前線」と称するセミナーを企画しておりますので、ぜひお越しください。
 講師は亀田高志さん(医師)と北村庄吾さん(社労士)です。
 場所は大阪大学中之島センターです。
 お問い合わせは、lca@lcash.jp(LCA社会保険労務士事務所)まで。

 また 「月刊総務」 5月号 14ページ以下には、師匠が顔写真入りで紹介されております。
 どんな体育会系女子か、ではなかった、メンタルヘルスの現状がどんなものか、お知りになりたい方はどうぞご覧くださいませ。
 
 



2011年04月14日(木)更新

上善は水のごとし・・・

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 このあいだは「孫子」をとおして、「おのれを知る」ことについて考えたと書きました。

 「孫子」といえば、いくつかの思い入れがあることばがあります。
 そのうちのひとつに、 「兵の形は水に象る(かたどる)」 というのがあります。
 ぼくのなかでは、生き方の基本と言ってもよいくらいに大事です。
 
 むつかしいので、あまり表現としては美しくありません。
 でも、言っていることはとても大事だと思っています。
 
 「水」って、どんな性質を持つと思われますか??
 水は状況に応じて、氷にもなり、蒸発して空気にもなります。
 それだけではありません。
 状況に応じて、どんなに狭いところへでも流れていくし、決して高いところにいません。
 引力のせいでしょうか、かならず自分は低い位置へと流れていきます。
 染めれば、どんな色にも染まります。

 「孫子」はこの水の性質を、いくさの際の兵力展開とおなじだ、といっています。
 いくさは相手と自分の争いであって、自分の頭で思いえがいたとおりに展開するものではありません。
 そのときに、状況に応じて自分も展開できる上のような柔軟さこそが、たたかいにおいて必要だと言っています。


 しかし、この「孫子」の思想の根本には、「老子」の考え方が深くかかわっていると言われています。
 それが、  「上善は水のごとし」  という思想です。
 「孫子」では兵力展開という戦術レベルのおはなしとしてでてきますが、こちらでは考え方の基本として書かれています。

 なかみは上と同じことだと言ってよいと思います。
 解説を読んでも、上のことくらいしか書かれていません
  
 ただ、ぼくがおもうには、もっと応用が利くはずです。
 というか、「上善は水のごとし」の本当の意味はもう少し深いと思っています。

 水は状況に応じて確かに形を変え、自分を下においてへりくだっています。

 しかしまず、空気になり氷に形を変えても、水は決して消滅しません。滅びることはありません。
 状況に即応して生き続けます。
 つぎに、なによりも自分以外の者の生命を維持することに貢献しています。
このたびの震災で、人の生命維持にいかに水が大切か、思い知らされました。

 この2つの意味において、水は「上善」だと思っています。

 「孫子」にしても「老子」にしても、戦乱の続く中国社会で、大国にはさまれて存亡の危機にさらされた小国の生き延びる知恵をまとめたものだと言われています。
 そのいみで、おおきな企業のなかで、小規模企業が生き延びる・発展する知恵がいっぱいつまっています。
 ひとつは状況に応じて形を変えたとしても、決して滅ぶことなく・したたかに生きる。
 もうひとつは自社以外のお役に立つことが、そのための条件であり、存在意義でもある。

 「上善は水のごとし」・・・生き方の基本に触れることばだと思っています。
 

2011年04月12日(火)更新

彼を知らず、おのれを知れば・・・。

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 前回、「おのれを知る」と書きました。
 「おのれを知る」といえば、「孫子」の次のことばが有名ですね。

   彼を知りおのれを知れば、百戦してあやうからず

 ご存知の方も多いでしょうが、これは3つのことばからなっていて、あとに2つ続きます。
    
   彼を知らずおのれを知れば、一勝一負す

   彼を知らずおのれを知らざれば、戦うごとに必ずあやうし

 ぼくがけっこう気に入っているのは、  彼を知らずおのれを知れば、一勝一負す  ということばです。
すなわち、彼、つまり相手のことは知らなくても、おのれ、つまり自分のことをよく分ってさえいれば、負けてばかりはしない・2回に一回くらいは勝てるのよ、ということばです。
 まあ、半分負けるんじゃあねえ・・・、という声もありそうですが、ここはやはりおのれ、つまり自分の 強みと弱みを知れ!ということがポイントだと思っています。そうすれば、すくなくとも連敗すること(「必ずあやうし」)だけはないのよ・・・と。

 自分でなにか事業をする・・・ということは、これがやりたい!!これをやるために!!というつよい思いがあったからだと思います。
そんなおもいがあれば、自然に自分の思考・目・耳がその方向へ向いていくものだというのが、ぼくの実感です。
また、周囲にも、よく似た分野に関心を持つ人が集まっても来ます。
当然、知識も情報も増えて、それが強みになってくる・・・というのも、実感です。 

 また、自分がしたいもの・これをもってなら世の中に貢献できるというもの・・・事業を始めるとき・行き詰ったとき・判断に迷ったときに、そのことが判断の基準になるように思います。

 そのことをつきつめるのが、「おのれを知る」ということなのでしょう、きっと。
 
 彼、つまり相手は仕事に応じ・毎日変わるかもしれないです。
 だからかれ・相手のことは、必ずしも十分には情報が得られず、「知らず」ということはありえます。

 しかし、おのれ・自分のことは、ほかでもない自分・寝ても起きても・飯食ってるときも風呂に入っても、休みなくおつきあいしないと仕方ないので、自分のことは自分が一番よくわかるはずだし、わかっているべきだ・・・。
 自分の強みと弱みがよくわかってさえいれば、多少相手のことがよくわかっていなくても、自分の価値基準からして、いけそう・あぶなそう・楽しそう・つきあえそう・・・なんていう判断はできていけそうじゃありません??

 そう考えると、自分のことが分っていさえすれば、相手について情報が充分でなくても、少なくとも負け続け(「必ずあやうし」)はない・・・、というのも、合点がいきそうですよね。
 
 もっとも、3つでひとつの成句ですから、ここだけですべてを結論づけられはしませんが・・・。

 あと、この成句で「あやうし」「あやうからず」とあって、かならず勝つとか、かならず負けるといわないのは、勝負には「時の運」がからむので、負けそうでも幸運で勝つとか、その反対もあるからだ・・・と、ものの本には書いてありました(なるほど・・・)。


 おのれを知るとはそういうことなのだと、きのう一日、仕事をしながら考えておりました。

  そして、事務所の経営理念も、ブログ冒頭に掲載させて頂きました。

2011年04月10日(日)更新

知己(おのれを知る)・・・同友会・経営指針セミナーに参加して・・・

 こんにちは。
 社労士の 西村介延 です。

 この土日、泊まり込みで同友会の経営指針セミナーに(経営理念コース)参加して来ました。
 同友会に入りたてで、行っても大丈夫かいな??という疑問がありながらも、諸先輩のすすめもあって、参加させて頂きました。

 自分が何のために、社労士になったのか、何をしたくてなったのか、あらためて考える機会になりました。
 おのれ自身を知れ、おのれを知ることで、ひとを知り、世界も知ることができる・・・とは、よくいわれることではあります。
 ありますが、なかなか自分自身を振り返って、おのれを知る機会はありません。
 今回の指針セミナーはそのいい機会だったと思います。
 受講生3人に、指導者(リーダーとサブリーダー)が3人という少人数だったこともあり、懇切丁寧に指導して下さり、開業当初の自分が求めていたものを、自分の経営理念として振り返ることができました。

 なかなかできなくてなきそうになっていました。
 そんなとき、西村さんの中の熱い思いは、他の参加者とはまた違うものがあると思う、重油か原子炉でも燃えているように思える、
それをそのままだだせばいいのだ、とアドバイスをして頂きました。
 そのおかげで、未完成ながら事務所の理念らしきものが出来上がりました。
 まだまだ完成途上で、7月の次のステップまでに、もう少し理念らしくしないといけないと言われはしましたが・・・。

     メンタルヘルス対策を行い、働きやすい職場環境をつくりあげることが、私たちのよろこびです。

 どうです?師匠。
 
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会社概要

障害年金 申請相談・代行業 就業規則作成・改定業 各種公的助成金申請相談・代行業

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個人プロフィール

趣味 音楽鑑賞(内田光子やバックハウスのピアノ協奏曲のCDでの鑑賞)

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